電気防食工法

電気防食工法が適用できるコンクリート構造物はさまざまです。海岸沿いまたは山間部で積雪時に凍結防止剤を散布するような環境に架かる橋梁やボックスカルバート、落石・雪崩から道路を守るロックシェッドやスノーシェッド、海洋・港湾構造物である船着きや荷揚げに用いる桟橋など多岐にわたります。
このようなコンクリート構造物の内部にある鉄筋を腐食から守るための補修工法のひとつが電気防食工法です。

外部電源方式

外部電源方式とは、難溶性電極(陽極)と直流電源装置を設け、受電した交流入力を装置内で防食に有効な直流電流に変換して、電極から防食電流を供給する方式です。直流電源装置内で防食電流や出力電圧などを制御することができます。この方式は、電力会社等による交流入力が必要となり、施設管理者は一般的に電力会社とのご契約が必要となり電気代が必要になります。

照合電極をコンクリート内に埋設し防食効果の確認を行う。
(直流電源装置内で測定)

コンクリート内に設置した陽極から内部鉄筋に向かって防食電流が供給される。

直流電源装置内で通電量の調整およびON/OFFを行い、防食効果の確認を行う。

流電陽極方式

流電陽極方式とは、鉄筋などの防食対象金属よりも錆びやすい亜鉛などの金属と鉄筋を電気的に接続し,金属固有のエネルギーである電位差による自然な起電力を利用して防食電流を供給する方式。直流電源装置を必要とせず、防食電流や出力電圧の調整も不要なため、点検・メンテナンス作業を最小限にすることが可能です。この方式は電力会社との契約が不要となり、電気代も生じません。

照合電極をコンクリート内に埋設し防食効果の確認を行う。
(モニタリングボックス内で測定)

鉄より卑な金属が犠牲となって溶けることにより、防食電流を供給する。

陽極と鋼材(排流端子)をリード線でつなげることにより防食回路が形成される。

リボンメッシュ方式(外部電源方式)

リボンメッシュ陽極は、金属酸化物をコーティングしたチタン製の網状帯状陽極です。軽量で扱いやすく、長さ当たりの接地面積が大きいため大きな防食電流を流すことができます。コンクリート表面に一定間隔で切削した溝にこのリボンメッシュ陽極を設置し、セメントモルタルで充填するのが本方式です。リボンメッシュ陽極と防食対象の鋼材に接続した排流端子を直流電源装置にそれぞれケーブルで接続することで回路を形成し、防食電流を供給します。

  • ・劣化部のはつり量を最小限にできる。
  • ・陽極材がコンクリート内に埋設されるため、
    漂流物による損傷を受けない。
  • ・陽極設置後も躯体コンクリートの状態を目視できる。
  • ・多くの実績がある。
施工状況1
カッター等で陽極設置用の溝を形成する。不要な金属片は除去する。
施工状況2
溝内に陽極を設置し、専用のモルタルで埋戻する。
施工完了
直流電源装置・配線配管を設置する。通電調整後に所定の防食電流を供給する。

チタン溶射方式(外部電源方式)

金属チタンをコンクリート表面に溶射し、触媒液を塗布することで形成される陽極皮膜を陽極として用いる方式です。チタン溶射皮膜と防食対象の鋼材に接続した排流端子を直流電源装置にそれぞれケーブルで接続することで回路を形成し、防食電流を供給します。チタン溶射皮膜は非常に薄く軽量であり、溶射したコンクリート表面全体が陽極となるため、他の方式と比べ電流分布が均一であるほか、コンクリートをはつることなく表面処理のみで陽極を形成できるのも特徴です。

  • ・チタンの溶射皮膜形成による防食のため
    死荷重の増加がなく、剥落の危険性が低い。
  • ・かぶり厚さに影響されにくい。
  • ・外観上全面に溶射膜が露出する。
  • ・施工後躯体コンクリートを目視できる。
  • ・施工実績が比較的多い。
施工状況1
コンクリート表面の下地処理としてブラスト処理を行う。不要な金属片は除去する。
施工状況2
コンクリート表面にチタンを溶射して皮膜を形成し、電極活性剤を塗布して電解処理する。
施工完了
直流電源装置・配線配管を設置する。通電調整後に所定の防食電流を供給する。

亜鉛シート方式(流電陽極方式)

犠牲陽極材である亜鉛の効果を最大限に引き出すため、当社独自のバックフィル(電解質)を組み合わせた亜鉛防食板を陽極として用いた方式です。この陽極をアンカーボルトでコンクリート表面に設置・保護カバーで固定し、陽極と防食対象の鋼材に接続した排流端子をそれぞれケーブルで接続することで回路を形成し、防食電流を供給します。犠牲陽極材を用いているため直流電源装置が不要であり、外部電源方式と比べ維持管理が容易です。

  • ・コンクリート表面に設置するため、
    はつり量を最小限にできる。
  • ・電源装置が不要で維持管理も容易である。
  • ・流電陽極方式のため、プルボックスや配管材を
    最小限にできる。また、一部に破損が生じたとしても
    全体に影響は及ばず、防食効果の消失を限定的に
    留めることができる。
  • ・多くの実績がある。
施工状況1
コンクリート表面を清掃後、陽極取付位置をマーキングし、アンカーボルトを取り付ける。
施工状況2
アンカーボルトを用いて、亜鉛シートを取り付け固定する。アンカーボルトが腐食しないようボルトキャップを取り付ける。
施工完了
亜鉛シート間の結線後、シートの端部処理とモニタリング部の配線配管を行い、防食電流を供給する。

NAKAROD®方式(流電陽極方式)

犠牲陽極材と特殊バックフィルからなるシステムをユニット化した陽極を用いた方式です。このユニット化した陽極と防食対象の鋼材に接続した排流端子をそれぞれケーブルで接続することで回路を形成し、防食電流を供給します。亜鉛陽極方式と異なりコンクリート表面に一定間隔で設置するため、対象となるコンクリート全面への設置が不要で、簡易な施工が可能です。また、犠牲陽極材を用いているため直流電源装置が不要であり、維持管理も簡単に行えます。

  • ・かぶり厚さに影響されにくい。
  • ・はつりガラなどの廃棄物がほとんど発生しない。
  • ・FRPトレイが橋軸方向一定間隔で配置される。
  • ・施工後躯体コンクリートを目視できる。
  • ・電源装置を必要としない。(電気代不要)
施工状況1
コンクリート表面を清掃後、陽極ユニット取付位置をマーキングし、治具を用いて削孔する。
施工状況2
ビスを用いて陽極ユニットをコンクリート表面に設置する。
施工完了
陽極ユニット間の結線後、モニタリング部の配線配管を行い、防食電流を供給する。